金色ラブリッチェ 感想 ―Everything Gold Can Stay ― (2500文字)
世界はいつも、こんなにも綺麗に黄昏れていく。
金色の空が黒く闇に暮れていく。その色がすごく綺麗だった。
ブランド:SAGA PLANETS
シナリオ:さかき傘
公式サイト:金色ラブリッチェ
萌えゲーアワード2017年準大賞おめでとうございます。
いや、受賞したからプレイしたわけではなく(よく参考にしているのは確かですが)購入自体は今年の頭に済ましてるんですよね。で、プレイ自体もセーブデータ見る限り2月の半ばから始めてるので、約四ヶ月間プレイし続けたことになります。
別にダレたわけではなく、忙しい中でもゆっくりゆっくりプレイできる作品というか。こういう手合いのゲームは主人公に感情移入しないとプレイできないため、時間が開いてしまうと投げるのですが、普通に続けられましたね。
やはりそういうのは、ライター(プロデューサー)がシナリオにうまく抑揚を付けてくれるおかげというか。まぁ手腕ですよねー、とか。
そしてコレ、批評空間のコメントで気づいたんですけど、確かにサガプラってVA系列なんですよね。このブランドはナツユメナギサ、はるゆきさくらと続いて3作品目ですけどなんかめちゃくちゃ納得しました。
そんな感じの金色ラブリッチェ感想。
今回は、ある少女がたどり着いた金色のハッピーエンド、決して忘れる事のない輝きについてのお話です。
以下ネタバレ注意で。
Unforgettable Gold
―――あの輝きを、きっといつまでも覚えている。
「生きた意味」という問いはありふれていて、けれど誰もがハッキリと答えられない命題の1つではないだろうか。きっと生きることに意味はないと分かっていながら、それでも我々は問うことをやめられない。
我々は不安なのだ。いつか闇に沈む生が、黄金足り得ないのではないかと。
主人公達が通う私立ノーブル学園の格言の1つに、こんなものがある。
人が生まれ、生きる上で無駄なことなど何一つない
エキスパートプランという各生徒の個性を伸ばす方針ならではの言葉は、目標のために無駄な時間を過ごすなという意味―――ではない。なんでもない日々、平凡な日常、取り立てて話すほどでもない出来事の数々。そんなありふれた物は、決して無駄ではないということにほかならない。
自分の在り方に誇りを持てるのなら、カッコ良くいられたのなら、あの日々も美しき黄金の1つなのだ。
カッコつけるって大事なことだよな。カッコよくあろうとすることって
黄金でいようとすることって
―――央路
それを知ったからこそ、理亜はありふれた一年間の最後に世界の美しさを語る。
世界はどの時間もどの瞬間も、黄金だったって
思い出す時間のすべてが輝いてる
―――理亜
確かに彼女は不運だったかもしれない。不治の病を背負って、母親には見放されて、ついには早すぎる死を迎えてしまう。
けれど、だからといって、彼女の生が不幸なものであったはずがない。
自分に誇らしくカッコよく生きられた。
自分のためにカッコつけて生きる人たちがいた。
いずれ訪れる闇の先に再び黄金が昇ることを知った。
―――その輝きを、最後まで忘れない。
「生きた意味」という問いはありふれたものでありながら、誰もが答えられない命題の1つだ。そしてそれと同じように、「死ぬ意味」というものも答えがない問いだろう。
生に意味はなく、死にも意味がないのなら、我々が信じるべきはその美しさだけだろう。自分の人生がまさしく黄金であるという確信。そこにおいてのみ人生の価値は決まる。決めることができる。
だから、彼女の生き様をビターエンドと言われると少し反論したくなってしまう。
彼女はこの世を去ったけど、その最期は確かに幸福なものではなかったか。
その在り方に、我々は胸を打たれたのではないのか。
だからこそ、あの輝きを、きっといつまでも覚えている。
The Extra Bouquet
望むように生きるというのは凄いムズかしくて。自分が願う「こうなりたい」とか「ああなりたい」なんてものは、どうやったって想像上のソレとズレていくのだと思います。
けれど必死に、なんとか食らいついて理想の形に生きようとする人たちは確かにいるわけで。
だからこそ、黄金という自らに誇れるような生き方は尊くて美しいのですね。
で、今作の感想なんですけど、正直あまり言葉にしすぎてしまうのものなぁ、という思いもあって僕が感じたものをそのまま書きなぐってしまいました。
僕が覚えているのは、最後まで笑顔だった女の子の輝き。だからそれをビターなんて言われると「いやいやそんなことねぇよ」って言いたくなっちゃうんですよね。いやぁオタクは面倒くさい。
僕にとって「金色ラブリッチェ」は僧間理亜の物語で、言い換えれば彼女の人生を描いたものだと思っています。
だからこそ、死生観とか生き方を考えさせるための物語ではなく、僧間理亜が必死に生きた証としての物語なんです。僕たちがそこから何かを受け取るのは勝手です。だけど彼女は、彼女と彼女の大事な人達のために生きただけなんです。生の意味も死の意味もそこにはない。そんなものは僕たちが幻視してるに過ぎないんです。
作品というよりは、むしろ御伽噺のような。
ちょっと言葉にするのが難しいですね。ある意味サクラノ詩(とかすば日々)の対角線上にある物語の気がします。テーマではなくキャラを描ききることで見えてくるものがある。うん、わりと新境地では?
お気に入りキャラは……玲奈。
いや、ここまで理亜のこと語っておいてそれかよと思うかもしれませんが…!同級生とか幼馴染みたいな、垣根のない関係がめちゃくちゃ好きなんですよ…。もちろん理亜もすげー好きなんですけど、玲奈はわりとドンピシャというか…。
うん、何言っても僕のクズさが露呈するだけな気がしてきたからここらへんで。
それと最後に、在り得るはずのないExtra Bouquetについて。
あれはきっと、1つのユメだと思います。
理亜が、央路が、シルヴィアが、あるいは僕たちが。
叶えられないからこそ夢見た、届かない黄金。
けれど、僕たちはその輝きを手にするために、必死にカッコつけてるのでしょう?