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アルカディアの灯火(マリーベルは死んだとパパに伝えて編) 感想

『マリーベルは死んだとパパに伝えて』編

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【あらすじ】

突如、謎の原因によりモンスター達が跋扈する世界に落とされた主人公「草薙悠也」。

そして自分と同じ境遇に置かれた女性「翠」と4人の子どもたち。

彼はこの異世界で、他の5人と共に生きるしかなくなったのだ。

 

以下、場面と所感。

 

(ネタバレ注意)

 「反省」

内罰的思考は、所詮ただの言い訳だぞ。

自己嫌悪に逃げちゃ駄目だ。

(中略)

「誰が悪いのか、原因はなにか。今出て行った理由を探したところで、由希子たちは帰ってこないんだ。今はとにかく、どうしたら二人を連れ戻せるか、それだけを冷静に考えなきゃ」

(草薙悠也)

今できること、やるべきことを冷静に考えて実行する。

言葉で言うのは簡単ですが、実際やるとなるとやはり気になってしまって上手くいかないものなのではないかな、と思います。

「内罰的思考は、言い訳」という言葉はなかなか重く、たしかにな、という気もします。

自分を責めれば、楽になりますからね。でも、そこに逃げずに失敗した分をちゃんと取り戻せるように頑張る。

それが正しい反省の方法なのではないかなぁ、と思います。

 

「後悔」

無我夢中で口にした台詞っていうのは、どれほどその瞬間は正しいと信じていても、実際には考えなしの単なる暴言で、後から思い出すと、後悔する場合が多い。

激情にかられて選んだ言葉など、ろくなものではないからだ。

(後藤田隆明)

 激情に駆られた時、人は正しい判断を出来なくなると。

これは怒りだけではないよなぁ、とか思います。

心理学の本には、人は鬱の時、正常な判断ができないからなるべく重要な判断を避けるべきだ、と書いてありました。

そりゃ普通に考えればそうなのですが、おそらく激情も同じでしょう。

そういったものに駆られた時、人の脳は正常ではいられないのですから。

 

唯脳論 (ちくま学芸文庫)

唯脳論 (ちくま学芸文庫)

 

 

「科学と魔法」

思想論としての科学を僕は認めない、科学は技術なんだ。学べば誰もが使える、人類が唯一共有できる財産だ。電気も機械も医学も、みんなそうだ

なのに、この世界では魔法なんて怪しい存在が大手を振って歩いてやがる。ふざけやがって。おかげで、理論的な思考がこの世界では全く発達していない

それは確かに便利かもしれない。考えれば、祈れば現実が望むように変化するなんて、そんな都合のいい方法はない

だけど、僕は嫌いだ!

魔法なんて、才能に恵まれた人間だけに許された発展なんてくそ食らえだ、僕は科学が好きだ、科学文明こそが、進むべき未来の姿だと僕は今も信じている

良貨は悪貨を駆逐する。科学は、いつかかならず魔法に勝つ!

(草薙悠也)

なるほど、作中で女性蔑視や数学、科学が異様に進んでいないのがわかりました。

つまり、理論や理屈より感情が優先になりやすい世界のあり方なのではないでしょうか。

世界、ってたしかこの都市だけに限らない、世の中全てって意味だよね……それがどんな姿をしているかなんて……考えてどうするの?

ごく平凡な農家で育った少女にとっては、この世界が平らか丸いかなど、まったくもってどうでも良いことだ。

(病気の少女)

少女の言うとおり、世界の殆どの人間はそんなことどうでもいいと思ってしまうでしょう。

でも、我々の世界はそれを知りたいと思う人がいて、それを解明した人がいて、魔法なんかなくても才能と努力だけでそれを叶えてきた。

それがたとえその時に何かの役に立たなくても、遠い未来に役に立ってきた。

それこそが、科学文明の発展の基礎ではないかと思うのです。

 

「人が人らしくあるために」

「……古典全集も、一緒に探して来てくれる?」

「えっ?」

(中略)

隆明の顔を眺めながら、私は思う。

すぐに役に立つ本でなくたって、やっぱり、人が人らしくあるためには、絶対に必要なものというものは、この世に存在する。

おそらく、そんな生きていくためにもっとも大切なことを。

この家で誰よりもこの隆明が、一番、理解しているのだろう。

だからこそ、

隆明にはしなやかな、美しい獣のような、たくましさがあるのだ。

 人が人らしくあるために、何が必要なのかな、とか。

ちょっとここらへんは再考したいですね。

「楽園」

「だから、ここはきっと楽園なんだよ」

そして同時に、内心では舌を巻いていた。

身一つで、異世界に落ちてきて、

両親と、家族と永遠に離れ離れになって、夜ごと、寂しさに布団の中で泣いていたのに。

この世界にきて……楽しいと。

幸せだ、と。

……夢に見ていた、自分の望んでいた世界なんだと。

そう笑うだけの強さを、いつの間に、身につけていたのか。

(小此木美香)

 あるいは、これが強く笑うと、そういうことなのでしょうね。

不幸な目にあっても、それにずっと悲しんでるわけでなく、こうして立ち直って、幸せだと、楽しいと心の底から言える。

それが強さでなくてなんでありましょうか。

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【感想】

 非常に簡潔ながら、この世界観だけで、長編が一本作れそうだなぁという感想をいだきました。

短編のせいか、「楽園の守護者」編でも同じことを思いましたが、非常にわかりやすい世界観(裏を返せばありきたりな世界観とも言えるのですが)にしっかりとしたストーリーがあって非常に満足した一本でした。

ただ、先にプレイした「楽園の守護者」の方がクオリティとしては高かったため、少しだけ肩透かしを食らってしまったのは否めませんね。